民法では、普通方式遺言3種と、特別方式遺言4種を定めています。
普通方式遺言は、自筆証書遺言(民法968条)・公正証書遺言(民法969条)・秘密証書遺言(民法970条)の3種です。
原則としては、この普通方式遺言3種の中から選択して手続をするのが前提です。
ただ、生命の危機が迫るような緊急時のために、特別方式遺言も規定されています。
特別方式遺言は、一般隔絶地遺言(民法977条)・一般危急時遺言(民法976条)・難船危急時遺言(民法979条)・船舶隔絶地遺言(民法978条)の4種です。
実際には、ほとんどの場合は普通方式遺言にて手続をするのが通例です。特別方式遺言は、予備知識程度として理解しておけばよいでしょう。
自筆証書遺言は、誰の手を借りることもなく、単独で作成することができます。
その点では、最も手軽で身近な遺言方式です。
簡単に作成することができる反面、専門家のチェックも受けないため、いざ相続時に形式不備で無効になってしまう心配もあります。
自筆証書遺言であっても、内容に問題がないか専門家にチェックを受けておくと良いでしょう。
自筆証書遺言のメリット
誰の手も借りずに単独で作成できる。
作成する手続が簡単。
費用がかからない。
公証役場まで出掛けなくても済む。
自筆証書遺言のデメリット
自分だけで作成するため、形式不備や無効文言のチェックができない。
相続の際には家庭裁判所の検認手続が必要で、相続人に手間をかける。
容易に偽造が可能である。
遺言書を紛失した場合は、遺言者の意思通りに相続されない可能性がある。
ワープロ打ちは不可なので、全文を手書きにする必要がある。
自筆証書遺言の要件(民法968条)
・遺言書の全文が遺言者の自署で記述されていること。
活字やワープロ打ちは不可です。
・日付と氏名が記載されていること。
・押印してあること。(実印ではなくても可。)
上記の一つでも欠けていれば、自筆遺言証書としての形式不備となり、その遺言は無効となります。この形式不備で無効となる自筆証書遺言は意外と多いです。注意が必要です。
遺言内容を公証役場にてチェックを受け、公正証書にする方式が公正証書遺言です。公正証書は厳格な手続を要するので、遺言の内容を確実にするのには最適です。
公正証書遺言の作成には、公証役場を訪問、証人2名を用意、手数料の用意など、手間もかかりますが、公証人の関与によって遺言の確実性が保証されます。
当事務所では、お客様のご要望を伺って遺言書の原案を作成し、公証役場との打ち合わせの代行も承っております。
お客様と証人が、公証役場に訪問する回数が最小限で済むように、ご支援をしております。
(名古屋市内での公証役場で手続をする場合は、当事務所にて有料で証人を手配することもできます。)
公正証書遺言のメリット
公証人の関与により遺言書の形式不備の心配は無くなる。
公正証書には確定的効力があり、相続時のトラブルを予防できる。
遺言書原本は公証役場に保管されるため、遺言書紛失の心配が無い。
家庭裁判所での検認手続は不要なので、相続を受ける立場の人に手間をかけない。
公正証書遺言のデメリット
公証役場での手数料が必要。
公証役場に訪問しなくてはならない。
証人2名を用意しなくてはならない。
未成年・推定相続人・受遺者(相続を受ける人)は証人の欠格者となり、証人にはなれません。(民法974条)
公正証書遺言の要件(民法969条)
・公証人の面前にて遺言の内容を確認する必要があります。
・証人が二人以上必要です。
実印・印鑑登録証明書・戸籍謄本・不動産の登記簿謄本・固定資産評価証明書等の資料を用意しておく必要があります。
遺言の内容を秘密にしておきたい場合に、秘密証書遺言を作成するという選択肢があります。
公正証書遺言と同じように公証役場で作成するのですが、遺言書の内容を密封して、公証人も内容を確認できないところが相違点です。
遺言内容の秘密は守れますが、公証人が遺言内容のチェックをしないため、形式不備や内容の無効箇所があると、遺言の効力が否定されるというリスクもあります。
秘密証書遺言のメリット
遺言内容を秘密にできる。
遺言内容を秘密にすることで、生前のトラブルは防止できる。
秘密証書遺言のデメリット
公証人が遺言内容を確認できないので、形式不備などによる遺言無効のリスクがある。
公証役場に証人2名と出向く必要がある。
費用がかかる。(秘密証書遺言には11,000円加算となる。)
秘密証書遺言の要件(民法970条)
・公証人の面前で手続を行う。
・遺言証書に押印し、それを密封する。更に封印する。
・証人2名以上が立ち会いをする。
秘密証書遺言と公正証書遺言は、どちらも公証役場にて作成するという点では同様です。
しかし、秘密証書遺言は遺言内容を密封するため、公証人が点検をすることができません。そのために、形式不備などで遺言が無効になるリスクを残します。
公証人は公平中立的な立場で遺言書を点検し、法律によって守秘義務が課せられているので、遺言内容を口外することはありません。
証人の2名を利害関係のない人に依頼し、守秘義務契約をすることで、公正証書遺言でも秘密証書遺言と同様の効果を期待する事は可能です。(名古屋市内の公証役場で手続を行う場合には、当事務所にて有料で証人を手配することも承ります。)
当事務所では、遺言内容を秘密にしたい場合でも、公正証書遺言を選択することをお勧めします。